先日2024年12月、令和6年度補正予算ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下、ものづくり補助金)の資料が発表となりました。
ものづくり補助金には、どの申請枠に応募するか如何に拘わらず、基本要件というものが定められています。ものづくり補助金への申請を検討するにあたっては、基本要件を正確に理解したうえで、事業計画の作成に着手することが非常に重要となります。
そこで本記事では、2024年12月時点最新のものづくり補助金の発表資料も踏まえながら、ものづくり補助金の基本要件について解説を行います。
ものづくり補助金の基本要件とは?
では早速ですが、最新の資料に掲載されている基本要件について紹介します。
先日発表されたものづくり補助金の資料に書かれた基本要件は以下の通りです。
基本要件
中小企業・小規模事業者等が、革新的な製品・サービス開発を行い、
①付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加
②1人あたり給与支給総額の年平均成長率が
事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上又は
給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加
③事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準
④次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ)
の基本要件を全て満たす3~5 年の事業計画 に取り組むこと。
出典:令和6年度補正予算ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金資料
一見すると、18次締切までの基本要件と似てはいますが、一部変更になっている部分もあるようです。
いずれにせよ、少し見ただけでは、すぐに理解しがたい内容ですよね。
各項目別にもう少し詳しく見ていきましょう。
ものづくり補助金の基本要件詳細
①付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加
1つ目は、補助金申請において定番ともいえる付加価値額の増加要件です。ものづくり補助金の基本要件では、付加価値額の年平均成長率が3.0%以上となる事業計画を作成する必要があります。
この付加価値額の要件については、18次締切の公募要領と変更がありませんでした。
なお一般的な「付加価値」という言葉については、多様な定義がありますが、ものづくり補助金における付加価値額の定義は以下の通りです。
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
こちらの付加価値額を年平均で3.0%以上増加させる必要があるため、提出する事業計画期間によって、必要な増加率は異なります。事業計画期間ごとの必要な増加率は以下をご確認ください。
事業計画期間 | 付加価値額の成長率要件 |
3年計画 | 9.0%以上 |
4年計画 | 12.0%以上 |
5年計画 | 15.0%以上 |
以上が、ものづくり補助金の基本要件「付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加」でした。それでは次の要件を確認しましょう。
②1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上
又は給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加
2つ目は給与支給総額の年平均成長率に関する要件です。少し要件が長いので、1つ1つ紐解いてみていきましょう。
給与支給総額の要件は以下の2ついずれかを満たす必要があります。
(1)1人当たり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上
こちらはものづくり補助金の18次締切までにはなかった要件です。
ものづくり補助金の申請では事業を実施する場所を定める必要がありますが、こちらの要件を満たすには、事業実施場所の所在都道府県の過去5年間の最低賃金の平均成長率を把握したうえで、自社の従業員1人当たり給与支給総額の年平均成長率が、その最低賃金の平均成長率を超えている必要があります。
なお、地域別の最低賃金については厚生労働省の公式ページにて確認が可能です。上記を検討する際に併せてご参照ください。
(2)給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加
こちらは、ものづくり補助金の18次締切時点では、「給与支給総額の年平均成長率が+1.5%以上増加」でしたが、新たに発表された資料においては「給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加」となっているので、少し条件が厳しくなっています。
こちらの給与支給総額についても年平均で2.0%以上増加させる必要があるため、提出する事業計画期間によって、必要な増加率は異なります。事業計画期間ごとの必要な増加率は以下をご確認ください。
事業計画期間 | 給与支給総額の成長率要件 |
3年計画 | 6.0%以上 |
4年計画 | 8.0%以上 |
5年計画 | 10.0%以上 |
なお、ものづくり補助金における「給与支給総額」は、一般的な「人件費」とは定義が異なります。具体的には、「給与支給総額」には給与、賃金、賞与、役員報酬が含まれますが、福利厚生費、法定福利費などは含まれません。この辺りに注意しながら、給与支給総額の増額を計画しましょう。
③事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準
こちらの基本要件については、18次締切時点と変更がないようです。事業所内最低賃金、つまり事業所内で一番給料が低い人であっても、事業実施場所の都道府県の最低賃金から30円以上高い賃金となっていなくてはいけないということです。
例えば事業実施場所が東京都であった場合、先ほど同様に厚生労働省の公式ページを参照すると令和6年度の最低賃金は1,163円です。そのため、事業所内最低賃金は最低賃金1,163円に30円を足した1,193円以上になっていなければいけないということになります。また各都道府県の最低賃金は毎年改定されますので、その改定された金額に対して+30円を超えている必要があります。
なお、事業所内最低賃金の計算対象は、正社員だけではなく、パートやアルバイトの従業員も含めてこの水準をクリアしている必要があるので注意が必要です。
④次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ)
こちらの要件は、実は、18次締切までは加点要素に入っていた内容でしたが、今後は21名以上の企業に限っては基本要件となるようです。
要件を満たすためには両立支援のひろばにおいて、一般事業主行動計画を提出する必要があります。補助金の公募が始まってからでも十分間に合う内容ではありますが、登録から公表までは通常1週間程度かかることに加え、他の補助金でも基本要件や加点要素になっていることが多いため、通常よりも公表まで日数がかかってしまうリスクもあります。
いずれにしてもものづくり補助金の申請を検討する場合は、早めに登録まで済ませるようにしましょう。
ものづくり補助金の基本要件に関する注意点
ここまで2024年12月時点最新のものづくり補助金の発表資料を基に、基本要件を説明してきました。本項では、基本要件に関する注意点を簡単にまとめたいと思います。
事業計画には審査がある
ものづくり補助金は、基本要件を満たした全ての事業者に、補助金が付与されるわけではありません。専門家審査員による事業計画の審査を経て、審査を通過した場合のみ採択を得ることができます。ものづくり補助金第18次締切の採択率は35.8%であったため、審査に通ることは決して容易ではないと言えるでしょう。また、通常事業計画の提出締切から採択結果が発表されるまでは2~3か月程度の期間を要するため、十分な余裕を持ったスケジュール策定が必須となります。
申請枠によっては追加の要件が課される
本記事では、ものづくり補助金の基本要件を説明いたしましたが、実際には申請枠によって追加の要件が課される可能性もあります。そのため、申請を検討する際には基本要件だけではなく自社が申請を検討する申請枠の要件も併せて確認する必要があります。
基本要件以外に加点要素がある
これは基本要件自体の注意点ではありませんが、採択をされる上では非常に重要なポイントとなります。前述した通り、ものづくり補助金の審査は要件を満たせば採択されるものではなく、専門家審査員による審査があります。加点要素は、事業計画の内容と直接関係ない項目などもあり、スキップしてしまいがちですが、少しでも採択に近づくためには、基本要件だけでなく加点要素を取りに行くことをお勧めします。項目によって加点獲得の難易度は異なりますが、登録するだけで加点になる項目などもあるため、必ず公募要領をチェックしましょう。
ものづくり補助金の申請は専門家への相談が無難
この記事では、ものづくり補助金の最新発表資料を基に、ものづくり補助金の基本要件について解説してきました。
前述したように、ものづくり補助金の申請は、競争率も高く、高い事業計画作成のスキルが求められます。また、事業計画作成や書類の収集は、多くの時間が必要となるため、通常の事業運営との両立が求められます。そのため、申請を検討する際は、自社だけで完結しようとするのではなく、商工会議所や認定経営革新等支援機関などの専門家に相談するのが無難と言えるでしょう。
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